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プリツカー賞受賞建築家のつくる家 のエントリーについて

あけましておめでとうございます。
R-STOREの浅井です。
本年もよろしくお願いいたします。

新年一発目は、先日エントリーしたこの記事に関して改めて綴ることから始めたいと思います。
思いがけず多くの反響をいただき、かなり私自身驚きました。(twitterをまとめて下さった方がいらっしゃいます。→コチラ )
様々な意見に触れる事で、私自身不動産事業者としてのポジショニングについて、かなり考えさせられましたし、示唆に富む意見も多くいただきました。有り難うございました。

中には「建築家になれなかった人の逆恨みだ」とか「炎上マーケティング」だとかいうことをおっしゃる方もおられましたが、そういった意図は全く無く、あくまでも建築学科を卒業した上でディベロッパーとして建築の発注者としての立場も経験し、現在不動産仲介業を生業としている一個人として、建築と不動産のギャップについて常々考えていることを書かせていただいただけであることは、この場ではっきりと申し上げさせて頂きます。

それと、私の立場をはっきりさせておくと、この建築の企画にも開発にも一切関わっていません。管理をされている不動産会社さんから、「空室が埋まらないのでR-STOREに掲載して募集してくれないか」と依頼を受けただけです。不動産仲介業は空室を埋めた時点で成功報酬として仲介手数料をいただける商売ですので、埋まらなければ利益はありません。逆に空室保証をしているわけでもないので、埋まらなくてもキャッシュアウトもありません。管理をしているわけではないので、その部分において責任も負っていません。そういうポジションです。レピュテーションリスクはありますが、金銭的な意味では完全にリスクフリーです。なので「お前らが作らせておいて、埋まらねえからっていって建築家のせいにするな」、「管理してる立場で埋まらないから建築家の責任にして言い訳しでるんでしょ?」というような意見もいただきましたが、弊社はそういったボジションでは無いので、それは全く当てはまりません。

「てめえでハンサムとか言ってるんじゃねえよ」というご意見も頂戴しましたが(笑)、10年来の友人がつけてくれた大切なタイトルなので、これはこのまま行かせて頂きます。

先日のエントリーへの反応として、最も印象的だったのが、「発注者との合意の上でやったことなんだから文句言うな」、「発注者側の勉強不足、リテラシーの問題」もっと言えば「妹島さんに頼んだ時点でああなるってことは想像できるでしょ?」というような意見でした。
これは、私自身もそう思います。極論すれば大家さんと妹島さんの問題だから、第三者が口を挟む問題ではない。これ、正論です。しかし、それが導く結果について、しっかりと考えないといけないと思います。

私がディベロッパーに勤務していた時代、渋谷区猿楽町の商業施設の開発に担当として携わりました。6年くらい前だと思います。我々は自己資金と借入金で土地を購入し、そこに商業施設を建設し、テナントを誘致して利回り物件とした上で、ある外資系の不動産投資ファンドに売却する予定でした。当時はそういうファンドビジネスの隆盛期でした。
代官山という土地柄、建築としても話題を呼べるものが良いだろうと考え、当時注目を集め始めていた若手の建築家の方に設計をお願いしました。色々と案をいただき、模型なども一生懸命つくっていただき、私も含め社の人間は頂いた案に興奮し、とても喜び、時には建築家の方と議論し、1年くらいかけて18テナントが入る商業施設が完成しました。それは、白い壁の美しい建物で、小住宅が密集する代官山のスケール感にも合った素敵なものでした。

しかし、いざテナント誘致してみると、まったく反応が悪い。例えば「地下の視認性が悪い」、「外壁のガラスの面積が少な過ぎて、外に対して店舗をアピールできない」、「建物として一体感があり過ぎて、店舗の個性が消えてしまう」、「サインが小さ過ぎる」反応は様々でした。結局一度も満室になることが無いまま、リーマンショックを迎え、この建物を目論み通り売却することは出来ませんでした。つまり、このプロジェクトは我々発注者側からすると失敗でした。当初の目論みを達成できなかったわけですから。

この件で建築家の方を責めるつもりはありませんし、責めたこともありません。素晴らしい努力をしていただいたと思っていますし、我々も竣工当時はその建築に満足していました。

話は変わりますが、この物件の近隣にガラス張りの何てことは無い商業施設が建っています。総ガラス張りで店内の様子がとてもよく見えます。ここには某大手セレクトショップが竣工当時からずっと入居しています。お客さんもたくさん入っているように見えます。この違いは何なのか?

これが、詰まるところ前述した「発注者側のリテラシー不足」なんでしょうね。代官山というオシャレな場所には、建築家の作品が似合うと安直に考え、建築家の提案に舞い上がって深く採算性やテナントの立場に立って検証することをせずに着工させてしまった発注者側のリテラシー不足。私自身も痛切に反省しました。

でも、そう簡単に言ってしまって良いのでしょうか?だとすれば、そういった経験をした発注者が次に同じようなプロジェクトを手がけるときにとる行動は何でしょう?
答えは簡単。「建築家はずし」ですよね。我々もそうしました。赤坂サカス近くに購入した土地に商業施設を建てるプロジェクトでは某大手組織設計事務所にお願いしました。建築としての面白さは無いのかもしれない、でも彼らの方が投資用不動産に対する見識が深く、プロジェクトとしての失敗のリスクは少ない。そう判断しました。

結局何が言いたいかというと、先日の妹島さんの集合住宅のような事例があると、投資家(発注者)たちは建築家を避けるようになるわけです。それは嫌だな、と。
言うまでもなく、建築は「実需」か「投資」の2種類しかありません。実需は自宅など。これは採算性無視でも良いですよね、自己満足ですから。「投資」は採算性が前提です。「採算性を前提とするものは建築家には任せられない」そうなっちゃやばいと思う訳です。これは簡単に言えば、建築家の活躍できるフィールドの半分を捨てているのと同じわけですよ。
「採算まで建築家が責任を負わないといけないの?」そういうツイートもありました。責任とは言っても未来のことは誰にもわからないし、詰まるところ発注者責任ですので、クライアントを無視して相当なデタラメやらない限り、建築家の責任が訴求されることは無いです。だから別に責任を負わなくて良いです。でも、マーケティングを行い、テナントや入居者の立場にたって、クライアントの利益を最大化するように考える、そんな姿勢があっても良いのではないでしょうか?それが、建築家の活躍のフィールドを広げるわけですから。

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こんな話題も先日のヤフーニュースに載っていましたが、まあ作家性だけを追求する建築家にはチャンスないと思う反面、こういったところに作家性をしっかり盛り込んで行かないと日本の都市の未来はどうなるの?とすごく憂鬱になります。

採算と作家性は二律背反するものではないですよね?それを両立できる建築家も活躍しはじめています。それを建築家だけで負うことが難しければ、経済やマネーに詳しいパートナーと組んでやっていけば良いわけです。そんなパートナー的な存在に私もならなければいけないと、頂いたツイートを拝見しながら思ったりしたんですが。

私には建築家の友人も多いし、建築家の方々に活躍していただいて建築家の社会的なポジションをもっともっと上げて欲しいと思っています。そして素晴らしい建物が世の中に溢れるようになって欲しいと思っています。
そのためには僭越ながら、あまり内向きにならずに、投資家や不動産屋との交流も増やし、何が建築家に求められているのか、もっと知った方が良いと思います。

もっと言いたい事はあるんですが、長くなりすぎるのでこの辺でひとまず終わります。

最後に私が経験して面白かったことを一つ。
ある建築家の方(建築家の定義ってなんなの?ってのもありますが)が、大手の設計事務所に勤務していて、倉庫の設計をしていたときのこと。当時は倉庫に投資するファンドに勢いがありました。久しぶりにお会いしたときに「不本意ながら、今『建物』の設計をしています」と言うんですね。その人に言わせると、要するにそれは建築ではない、建物だと言うことだったと思うんです。機能や採算の要求に基づいて設計しているだけで、「建築」をやれていない、と。僕は面白いなあ、と思って。何が違うんだろう?と。
おそらく「建築は実利を求めない」みたいなプライドが建築家にはあるのかなあ、と。今回の妹島さんの議論の中にも「あれは建築なんだから、採算性なんか考えちゃいけない、建物じゃないんだから。」みたいなコメントがあって、でもそういう感覚って一般の方には理解しがたいんじゃないかと思いました。

浅井

by r-store_asai | 2013-01-09 11:41 | ブログ


リノベーション、デザイナーズ、改造OK,賃貸住宅のセレクトショップR-STOREのハンサム社長浅井佳が綴る、住宅やライフスタイルのこと。


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