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母校の卒業設計の講評に行ってきました。

こんにちは。R-STOREの浅井です。

去る2月9日、母校である首都大学東京(旧東京都立大学)建築学科の卒業設計の審査員としてお招きいただき、行って参りました。
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審査員としての参加は今年が2回目ですが、普段設計の現場に触れていない私としては、何日も徹夜を続けながら巨大な模型とプレゼンテーションをつくりあげる学生たちのパワーには、毎度圧倒されます。
しかも今年からは卒業設計「展」と銘打ち、今までは学内にしか公表されていなかった学生たちの作品を、初めて学外にも公表しようという意欲的な試みでもありました。
私が日頃から指摘している「アカデミックな閉じた建築界」に対する問題意識を学生も持ちつつあるのか、今後も注目したいと思います。

ところで、本題の作品についてですが、簡単に思った事をコメント。その場で適格なコメントをするのが審査員の役目ですが、僕の未熟さもあり、後々反芻してやっと自分で納得できる評価ができたりします。

大賞は岡野愛結美さんの「にぎわうシカク」という小学校の提案でした。小学校はセキュリティの問題から社会に対して閉鎖的になる傾向があります。その一方で、中の様子もわからず子供の騒ぎ声だけが聞こえてくる近隣住民にとっては「迷惑施設」として捉えられているという問題があります。その双方の問題を設計によって解決しようとした作品でした。

準大賞は2作品で、一つは大林和磨さんの「森が紡ぐ記憶の火葬場」という作品でした。実は火葬場というのは全国的に不足しているようで、特に東京では火葬までに5日間ほど冷凍保存して火葬を待つというような現状があるようです。不足している火葬場という課題に、どう設計で応えるか。また「死」という問題にどう建築として向き合うか。そんなテーマだったと思います。

もう一つの準大賞は平嵜大地さんの「アレグザンダーのさがしもの」という都市計画の方法論に関する作品でした。廃止が予定されている伊丹空港を敷地として設定し、その巨大な敷地をどのように計画していくのか、その方法論を自分なりに導きだそうとした意欲作でした。

他にも20作品ほどあって、それぞれの作品を拝見し、総論として感じたことは、建築が建てられる根拠に対する意識が希薄なのではないか?ということでした。設計としては良い、でも「本当にそれって必要なの?どこに需要があるの?なぜ建てる必要があるの?」という建築が建てられるべき理由に対する問いかけが不足しているように感じました。例えば住宅が圧倒的に不足していた戦後には、住宅が建てられるべき理由がありました。でも、それは今は無い。それでも住宅を建てるのは何故なのか?そこには然るべき理由が必要だというのが僕の立場です。理由なき建築を建てることは、建築の受給のバランスを崩すし、そもそも公共事業に関して言えば、そんな財政的な余裕はないのです。だから、徹底的に理由を問いつめるスタンスが必要だと考えています。

当然と言えば当然なんですが、建築の建てられる最も強固な根拠は「需要」があるかどうか、です。だから準大賞の大林さんの火葬場に対する提案は、最も強固な建てられるべき根拠を持っており、だからこそ設計の良し悪しは抜きにして、強いリアリティを感じました。ちなみに、私はこの作品を大賞に押しました。

審査委員長として参加していたメジロスタジオの古澤さんからは、「需要があるから建てるというのはネガティブな発想だ。建築家は需要をつくりだす仕事だ。」という意見をいただきました。確かにそういう側面もあって然るべきだし、そうあって欲しいと思っています。ただ、「需要があるから建てる」ということをネガティブだと言い切って、そこに対して建築家が積極的な関与をしていかないのであれば、どこぞやの三流ディベロッパーが適当な設計をした火葬場が乱立し、一通りの需要を満たした後に「しょうもない火葬場が多い」と建築家の立場から空しい批評することになるのだと思います。

需要のあるところには、投資マネーも流入してきます。だからこそ、建築家のビジネスチャンスも多い。そこに建築家が切り込んで行かなければ、お金に対する嗅覚の敏感なディベロッパーたちが、どうしようもないものを建てまくるという状況が起こるでしょう(もちろん建築家の建てたものだから良いというわけではないですが)。だからこそ、建築家は「需要」に対して敏感であって欲しい、そう思った一日でした。

ちなみに、そういう意味では大賞の岡野さんの作品は、設計としては素敵なものでしたが、少子化が進み小学校の統廃合が進む日本で、敢えて小学校に対する提案が必要かどうか、というのは疑問に思いました。ただ深刻な待機児童問題をかかえる保育園にも転用出来る提案であり、保育園に置き換えれば確かな「需要」がそこにはあると感じました。

また、もう一つの準大賞の平嵜さんの作品は、「事業主」が誰なのかを強く意識することで、よりリアリティをもった作品になると感じました。おそらく伊丹空港が廃止されたのならば、その土地は民間に払い下げになるに違いありません。自治体が自ら資本投下するほど、日本の自治体は裕福ではないからです。そうなると、民間のディベロッパーが開発に携わる事になるので、そこに対するアプローチが必要でしょう。なかなか社会人を経験していない立場で、そこまで考えを及ばせることは難しいと思いますが、そのような意識を持ちながら設計に望んで欲しいと思いました。

最後に個人的には、四谷駅の南北線と丸ノ内線を結ぶ通路を計画した竹田さん低所得者向けに子育ての役割を団地の住人でシェアしあうリノベーションの提案をした津田さん、前者は商業的なポテンシャルが非常に高い場所に魅力的な空間をつくる計画で、そこに投資マネーを呼び込める提案の力強さを感じました。ただし、通路の設計がほとんどで、商業的なアプローチがなかったのは残念です。後者はシングルマザーや子育てのために働くことが難しい方々の社会参画を促す提案で、社会保障費の増大や、生活保護費の削減か喫緊の課題になっている現在だからこそ、女性の社会参画や収入増を促すことで、社会保障費を削減していくことにも繋がる提案だと感じ、そこに必要性=「需要」を感じることができました。ただし、これも民間が公からの補助無しで自立して事業化するためには、もう一段の事業性の精査が必要です。

しかし、またしても不動産屋の視点と建築家の視点との違いが浮き彫りにならざるを得ず(どちらが正しいというわけではないです)・・・
私は多分拝金主義者だと思われているんだろうな(笑)。金、金って言ってたし。

これに懲りず、来年以降もお招きいただけるのであれば、ぜひやってみたいと思っています。

R-STORE 浅井

by r-store_asai | 2013-02-13 10:52 | ブログ


リノベーション、デザイナーズ、改造OK,賃貸住宅のセレクトショップR-STOREのハンサム社長浅井佳が綴る、住宅やライフスタイルのこと。


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