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b6の解体と神話崩壊 その1

こんにちは、R-STOREの浅井です。

先日、明治通りを歩いていると、b6(東京都渋谷区神宮前6-28-6)という商業施設が解体され始めていました。何気なく前を通過したときは、ファサードの大規模改修でもしているのかと思いました。なぜなら、この商業施設が建てられたのは、2006年くらいだったと記憶していたからです。しかし、改修にしては様子もおかしいので、看板をよく見ると「解体工事」という文字。すぐにその場で竣工年を調べると、やはり2006年9月。相当に驚きました。建てられてから10年も立たずに解体されるというのはどういうことだ、と。
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解体されるb6

延べ床面積は5000平米弱にも及ぶ大規模な施設です。単純に坪当たりの工事費が70万/坪だと計算しても建物だけで10億にも及ぶプロジェクト。土地の面積が2200平米。取得時点ではまだ地価はそこまで高騰していなかったと思いますが、明治通りという立地を考えると、最低でも坪当たり3000万くらいはしたのではないかと思います。そうすると土地の取得費は約200億円。それだけの投資をした施設が7年で解体されるというのは、異常事態。仮に7年で投資を改修すると考えると利回りは15%程度必要で、この一等地ではあり得ない。恐らく当初の目論みでは5%くらいの利回りを出せれば良いと考えていたのではないでしょうか?そうすると目論み通りにいったとしても、20年は存続しなければいけない訳ですから、いかに異常なことかわかっていただけると思います。まあ、こんな数字を並べなくても、これだけの規模の建物が7年で解体されてゴミと帰すわけですから、誰であっても、もったいないとか、異常だということは感じていただけると思います。

で、どうしてこんなことになっちゃったの?という話なんですが、要するにテナントがつかないんですよね、このビル。僕も何度か個人的に足を運んだことがありますが、まずファサードが全部閉じられていて、中のテナントの様子が窺い知れない。だから目的買いの人はまだしも、一見さんは非常に入りにくい。一応各店舗のビルボードはついているのですが、2階以上の高さにあるので、通りの反対側からしか視認できない。ご存知の通り明治通りは道路幅もありますので、通りの反対側で店舗の存在に気づいても、容易には入れないわけです。あとは、やっぱりビルボードで店舗の存在は認識されるとは言っても、ガラス越しに店内の様子がわかるのとは全く違いますよね。お客さんが入ってるかどうかとか、何を売っているのかとか、店舗の雰囲気とか。そういったものはビルボードではわからないわけで、でもこちらとしては、そういった雰囲気からいろんな情報を認識して入店するかどうか決める訳です。だから、「お客さんが入らない=売上が上がらない=テナントが入らない」

施設に入ってみると、今度はサイン計画が最悪。本当にわかりづらい。デザインとしてミニマルで凝っているのはわかるけど、店舗名ではなく、マップにaとかbとか記号で表されていて(記憶頼りです。間違っていたらすいません)、マップとは別に記号と店舗名を対応させるサインがあって。要するにマップを見てから、視線を一旦マップから外して、今度は対応表を見るということをしないといけない。だから、「ああ、こんな店もあるんだー」みたいな発見が起こりにくい訳です。マップに直接テナント名が書いてあれば探しやすいのになー、と何度も思いました。確かにサインそれ自体の図としての美しさはわかるんですが、探しにくいんじゃ意味ねえよ、と。「探しにくい=お客さんあきらめる=客来ない=売り上がらない=テナント退去」みたいな。

明治通りに面したファサードの一角を付置義務の駐車場の入り口に占有されてしまっているというような、抗うことのできない、どうしようもなく不幸な要因ももちろんあるのですが、大きくはこの2要因によって、テナント候補から極めて評判が悪かったのがこのビルです。

商業施設は投資をテナントの賃料で回収するわけです。だから、テナントが入らなければ失敗。テナントが入らなければ利回りも出ないので、売却価格も下がる。行くも地獄、とどまるも地獄という状態で、リーマンショックが起こり、テナントの出店意欲がさらに減退。ディベロッパーも倒産するという最悪な負のスパイラルが起こったわけです。
で、融資している金融機関は少しでも融資を回収したいので、売りたい、と。でも、簡単には減損できないから、極端に安い値段での購入希望はあったかもしれないけど、それでは売れない。あーだ、こーだやりながら、一応今までは営業を続けていた、と。しかし、ここへ来てアベノミクスで景気も上向き傾向にあり、不動産価格も上昇傾向であるということで、今まで見向きもされなかったb6を、銀行も首を縦に振れる価格で買いたいという会社が現れた。それが東急不動産だったわけですが、しかし、買った側も「この商業施設使えないんだよな」という認識はもちろんあるので、解体して建て直しましょう、と。で、悲しくも7年の短い生涯を閉じることになった、と。そういうストーリーですね。

前置きが長くなりましたが、この施設の解体に至るまでには、こんなストーリーがある訳です。そのストーリーを一言で簡潔に言うならば「テナントが入らなかったから解体された」と。これに尽きます。

じゃあ、なんでテナントが入らなかったの?と。
やっぱり設計の問題だと思うんですよね。商業施設のセオリーをわかっていない。テナントが何を求めるのかがわかってない。お客さんが何を見たいのかわかっていない。ディベロッパーもわかってないから、ある程度有名な建築家に丸投げして、その提案を信用するしかない。で、建築家の方は「グラフィックデザイナーや照明デザイナー、ランドスケープデザイナーと一緒にデザインでき、刺激を受けながら進行できたプロジェクトでした。」とか語ってしまい、最終的に7年で解体された、と。そりゃ、刺激的でしょうよ、これだけのお金も無駄になったし、ゴミもたくさん出して、環境負荷も最高に高いプロジェクトなんだから。色んな意味で刺激が強過ぎます。

で、今度東急が建てるビルは、ガラス張りの視認性の高いビル。そりゃ、そうでしょう、と。最初からこれやってれば、こんな無駄なかったのに、と。非常に悲しい気分になりました。
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新しい計画。設計はKDa。


まだまだ書きたいのですが、非常に長くなるので、2回にわけたいと思います。
次回、なぜこんな不幸なスパイラルが起こったのか、もう少し突っ込んで考えたいと思います。

このあたりで。

R-STORE浅井

by r-store_asai | 2013-08-28 12:51 | ブログ


リノベーション、デザイナーズ、改造OK,賃貸住宅のセレクトショップR-STOREのハンサム社長浅井佳が綴る、住宅やライフスタイルのこと。


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